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精神分析のルーツ(メスメル) |
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精神分析とは何かを知るための1つ方法は、その大本。つまり精神分析のルーツをたどることだろう。では、それは一体どこと定めればいいのだろうか。
フロイトがはじめに催眠術を用いたことは既に何度か書いてきた。彼自身「精神分析は理論上も治療上も、催眠から継承した遺産を使用している」といったほど精神分析にとって催眠は重要なものだった。
その催眠のもととなったものが、暗示療法。この暗示療法を世界で初めてなしたのがメスメル(メスマー)。フランツ・アントン・メスメル(Franz Anton Mesmer)という人物である。
彼は占星術の原理を磁石の力によって説明できると考えた。磁石で人間の体をなでさすってるうち、まったくの偶然から催眠状態を起こすことを発見したのである。
その結果彼は動物に磁石の働きのような「動物磁気」があると考えた。が、ウィーンで反対され1778年パリに渡ることとなる。
金持ちの未亡人と結婚していた彼はパリの高級住宅地に開業し、科学ブームのおこっていたパリでメスメルの革新的医術は大成功を収める。
彼のパリでの治療は、水の入った桶にガラスや鉄を入れ、その桶から出た20本の鉄棒を患者に握らせ患者同士を紐でつなぐという集団療法だった。紐を「動物磁気」が流れると考えたわけである。
患者は発作をおこし、おさまったときには症状が消えている。
しかし、王立調査委員の調査によって動物磁気の存在が否定され、メスメルは「ペテン師」とされると、次第に評判は落ち患者の足は遠のき、彼はパリを退いてウィーンへ戻ることとなる。
言うまでも無いようなことだが、メスメリスムとは現代の目から見れば驚くほどのトンデモだったのである。精神分析というものに、うさんくささや怪しさを感じる人にとっては納得のいく話かもしれない。
ただ、これまで悪魔や呪いの仕業と考えられてきた心の病を、内容はともかくあくまで科学的に対処しようとしたメスメルの影響は、精神症の治療から宗教色を排除したという点で評価に値するものでもある。 |
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